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ミステリ創作(?)教室のクレージーでブルージーな日々の記録
by eimu00
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クラスリポート03.08.09

「ミステリーの書き方 上級クラス」 日時 2003年8月9日(土)PM4時30分~6時まで
会場 東急プラザ8F レポーター 井上一三

 本日は「台風10号」が北陸地方を北北東に進行していて、首都圏も雨風が強い天候だった。その影響のためであろうか、欠席者が多かった。

(1)今回の教材について
 ・今回は、創元推理文庫のマイケル・ギルバート著「捕虜収容所の死」を題材に講義が行われる。この著作は50年前のクラシック作品だが、「十分に新しさがある」として、前々回の講座で講師より紹介があった。「読者を惹きつけるスキルを取得するために教材として欲しい」という受講生の要望を受けて今回、取り上げられたものである。
クラスリポート03.08.09_b0042328_923452.jpg ・この作品の「あとがき」を森英俊氏が書いている。それを紹介する。
 1.「イタリアのアペニン山脈東部に位置する第一二七捕虜収容所では、カラビニエーレや監視兵たちの目を盗み、脱出用の地下トンネルが着々と掘り進められていた。トンネルの入口であるトラップドアは五つある収容棟のうちのC収容棟の炊事場にあり、複滑車を利用して四人がかりでストーブの足にかけられたワイヤーをひっぱると、コンクリートの床板全体がストーブをのせたまま空中に上昇するという仕組みになっていた。ところがある日、トンネルの先のほうで天井の一部が落ち、その下にイタリア側のスパイの容疑を持たれていたギリシャ人捕虜クトゥレスが埋まっているのが発見される。あと六週間ほどで貫通する予定の脱出トンネルの存在がばれてしまうことを懸念した捕虜側だが、ゴイルズ大尉が一計を案じ、死体をべつのトンネルに運んで天井の土砂を落とし、ありふれた崩落事故を装ってイタリア側に報告することにした。だがカラビニエーレのベヌッチ大尉は早くからそれに疑惑の目を向け、殺人容疑者としてゴイルズと同室のバイフォールド大尉を拘束する。バイフォールドの無実を確信する捕虜たちは、事件の真相を究明することで、バイフォールドの命を救おうとする」
 2.「ひと言でいって、スリラーと本格ミステリの要素とが渾然一体となった、奇蹟のような作品である。本格ミステリが後半からスリラー形式になるもの、スリラー形式のなかに謎解きが盛り込まれたものは作例がなくもないが、本書のように、最初から最後までスリラーと本格ミステリ的な部分とが絶妙なバランスを保っているものは、空前絶後といっていい。しかも、プロットにおける二重構造はこれだけにとどまらない。すなわち、ここには――
  ・二重の犯人探し クトゥレスを殺害したのはだれか。イタリア側に情報を流していたスパイはだれか。
  ・二重の不可能状況 四人でしか開閉することのできないトラップドアから、被害者をいかにトンネル内に運び入れることができたか。被害者はいかにして見とがめられずに六つのドアの前を通り、C収容棟にやってくることができたか。
  ・二重のデッドライン ゴイルズはバイフォールドが処刑される前に真相をつきとめることができるか。イタリアが降伏しドイツ軍に収容所が引き渡される前に、捕虜たちはそこを脱出することができるのか。
  ・二重の謎解き 第十三章「状況の歯車」で不可能犯罪が解明され、犯人の名が告げられる。ゴイルズがさらにスパイの名前を明らかにしようとした矢先に自体が急変、謎解きは中断される。大脱走の後日譚を描いた最終章「『――そして彼方へ』」では、さきの解決の一部(情報漏洩の手段)が覆されるとともに、スパイの正体が明らかになる。
  ――までもが用意されているのだ」
 3.「トリック自体はとびぬけて目新しいものではないが、不可能犯罪をめぐる状況はオリジナリティにあふれており、それを活かすためのセッティング(捕虜収容所)も申し分ない。だがもっとも特筆すべきは、くだんの不可能状況がこの設定の犯人でなければ成立しえないという点だろう。その結果、秩序が保たれているかのように思われた収容所でもやはり「規則なきゲーム」が演じられていたというを、ゴイルズもわれわれも思い知らされるのだ。
クラスリポート03.08.09_b0042328_931043.jpg   さらには、本格ファンであればあるほど、全編にちりばめられた巧妙な手がかりや伏線(被害者の爪がはがれていたこと、連合軍がシチリア島に上陸したとの手旗信号を送った新入り捕虜が直後にべつの収容所に写されたことなど)、気の利いた小道具(ルーレット盤など)に、にやりとせずにはいられないだろう。ゴイルズがトンネルのなかであやうく生き埋めになりかけ、そこで天啓を得る場面のなんとすばらしいことか!」

(2)講義内容
 ・以前にミステリーの題材を見つける格好の例としてお話した。題材の発見、意外なところで、こんなところにもミステリーが書けるひとつの好例である。50年前の作品で、いままで翻訳されないのが不思議であった。
 以下略。
 
(4)著作権の話(略)
(5)アイデアについて
 ・ 受講生から発言があった。「4月に講座で合評していただいた作品のことです。ここに提出する前に純文学で作家を目指している友人に見せたところ、設定は異なるが自分のアイデアを使った作品をある出版社に投稿したといって見せられた。表面には出ていないが、自分は時間をかけて調査している。それをシャーシャーとしているのが腹立たしい」
・ 講師から、
 1.その友人は悪気がなく、罪の意識もない。問題点として一つは、それを問いただせば友情にヒビが入る。二つには、信頼関係から実際に作品を読ませている。
 2.アイデアには著作権はない。この講座で知りえたアイデアを使うのを止められない。アイデアを料理するのは個性が必要である。この講座では、「盗用・流用」という問題は起きていない。
 アイデア権というものはあるとは思うが、他人のアイデアを使うには力が必要だ。それならアイデアは自分で作ったほうがよい。
 この講座の受講生は、みな個性のある人たちばかりでジャンルも異なるし、同質性がないと思う。

(6)次回は、木枯狐(染矢国男氏)作「愛しい女」の合評です。
by eimu00 | 2005-02-28 09:03 | 03年度
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