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ミステリ創作(?)教室のクレージーでブルージーな日々の記録
by eimu00
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クラス・リポート02.01.26

    1月26日 ミステリーの書き方 上級
クラス・リポート02.01.26_b0042328_91464.jpg この日は、会員渡辺由希「抱擁」の合評、講師による講評、それからシオドー・マシスン『名探偵群像』中の一篇〈名探偵アレクサンダー大王〉を教材としての講義があった。

1 渡辺由希「抱擁」の合評
 この作品は主人公智恵、彼女をめぐる男性、要一と治彦、それぞれの視点の3つの視点から書かれている。智恵と要一は互いに惹かれ合い、恋に落ち、海辺のホテルでデートを重ねる。しかし要一の会社の社長の娘、清美が現れたことによって、二人の関係は微妙にひずんでいく。要一のあいまいな態度もあって、智恵は次第に疑心暗鬼になっていく。ある誤解から、智恵は要一を決定的に失ったと絶望するが、ちょうどそのとき、高校時代の恋人、治彦が彼女の前に現れる。一方、ひたすら智恵しか思っていなかった要一は、智恵に去られてしだいに狂っていく。智恵は治彦と、要一との思い出のホテルがある海辺を、久しぶりに散策する。そしてふと、智恵は一人ホテルへと足を向ける。ところが、ホテルのあの部屋では正気を失った要一が、今も……
  会員の批評・感想
* 登場する男性の人物像に疑問がある。その心理についていけないし、実在感もない。
* 内面描写が男の読者にとってはよく分からず、読みづらい。読者層が限られるのではないか。
* 筋立てがよく分からない。特に最後の場面が、何がどうなったのか分からない。
* 感覚表現にすぐれている。そのままユーミンの歌の歌詞になってもおかしくない表現がいくつもある。読みやすい。
* 話の設定に不自然がある。会社のやり手の男がこれほど脆い心の持ち主とは考えられないし、治彦の登場も都合良過ぎる。
* ほとんどが感覚表現なのにスピード感がある。筋立ての不自然も一種の飛躍ととれ、不快ではない。美少女マンガの世界を言語で作ったのでは?不思議な小説だ。
  野崎六助氏・講評
* 全体的に見て、この作品は完成されている。書き直す必要はない。従来の会員とはかなり傾向が違っている。治彦の登場が突然過ぎはするが、彼、第三者の存在によって作品の収まりが良くなった。
* しかし問題点はいくつかある。
  1つ、最後の場面、何がどうなったか分からない。散文が使えていない。作中でも、散文の部分は浮いている。
クラス・リポート02.01.26_b0042328_913831.jpg  2つ、視点を複数にしたメリットがない。作者を定点として、複数の登場人物に視点を交代させるのは、お互いを客観化、距離化する作用があるのだが、この作品の場合すべての視点人物を同じ文体、同じ感覚で書いてしまっている。
  3つ、つまり、作者と登場人物との間に距離がないことによって、文体そのものは完成されている。しかし作品世界を拡げるためには、この文体をいったん壊してみる必要がある。
    参考図書  恩田 陸『黒と茶の幻想』

2 〈名探偵アレクサンダー大王〉シオドー・マシスン『名探偵群像』より

講義内容
 よくできた毒殺ミステリーということで取り上げた。毒殺ミステリーの特徴があらわれている。登場人物はわずか五人、
 アレキサンダー大王  ヨラス  メデイウス  ネアルクス  スーサ
他には実際には登場してこない、アンテイパテルだけだ。
この五人の中で、
 被害者  犯人  探偵  語り手(視点人物)
という4つの役割が分担される。
 まず謎が提起される。話の進行とともに容疑者が外れていく。真犯人が明らかになっていくときに、読者が思い込んでいた〈役割〉がひっくり返される。そこに意外性が出る。
クラス・リポート02.01.26_b0042328_92691.jpg クラス・リポート02.01.26_b0042328_922748.jpgこの場合は、
 被害者=探偵   犯人=語り手
だった。
 役割の転換は鋭角的であるほど意外性があるし、優れた作品だといえる。
参考図書  ドロシー・セイヤーズ「疑惑」
 アントニー・バークリー「偶然は裁く」
                            (文責 笠原)
by eimu00 | 2004-11-12 08:52 | 01年度
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