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ミステリ創作(?)教室のクレージーでブルージーな日々の記録
by eimu00
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クラス・リポート01.03.24

日 時:2001年3月24日(土)16時30分~18時00分
講義内容: 1.課題図書「神の灯火」(エラリー・クイーン)について
      2.受講生作品についての合評

1. 「神の灯」(エラリー・クイーン)―遺産相続をめぐる人の入替え、遺産の隠し場所探しにまつわる双子屋敷のトリックを、探偵エラリー・クイーンが解き明かす―
クラス・リポート01.03.24_b0042328_9592053.jpg野崎先生による解説
・ アメリカのミステリー作家のNo.1を選ぶとなるとエラリー・クイーンとなる。作品の質、量共に勝れているばかりでなく、評論、アンソロジーの編集と幅広く長期間に亘り質の高い活動をし、ミステリーの発展に貢献した。
・ 「神の灯」は、クイーンの最初の頂点の時期で30歳の時の作品である。一言で言うなら双子の家と人の入替えの話で、手掛りを与えながら如何に語って読者を上手く騙すか、作者の手際に注意して読んで欲しい。
・ クイーンの作品の常として、出だしが理屈を捏ねて難しい。
・ 第1章が作品の半分くらいを占め、外界から遮断された幽霊屋敷のような家の異常な状況の描写に手間をかけて不気味な雰囲気を盛上げていき、最後に家が消失する。家の消失に3ページを費やして読者の気を惹きつけいるが、その手法は参考にしてほしい。
・ 第2章には神の灯火が出、第3章で家が発見される。第4章が謎解きだが、説明がややこしくなくて無理がない。第5章で宝物の在りかが分かり、全てが解明される。
・ 謎解きの手掛りの前後に他の目立つ描写を入れて、手掛りを目立たなくしている。例えば太陽の夕日と朝日の描写の個所。又、割れたブランデーの瓶の破片等、小道具も巧みに使っている。


2. 講生作品についての合評
(1) 「ガラスの会話」(受講生 神津 海 作品)
 ―幼児の英語教育のためのカッコいい若い白人の男性による英語ミュージカル教室、という詐欺事件に、幼児性愛犯罪に関連する殺人事件が絡んだ、若い母親達の物語―
・ 簡単には騙せないような詐欺のからくりをもっともらしくさせるために、舞台を地方都市にしたり会費を安くしたりしている作者の苦労が見受けられ、結果としては成功している。(作者より、これは実際にあった詐欺事件で、もっともらしくするための特別な苦労はしていない、とのコメントあり)
・ 若い女性が陥りそうな話で面白い。
・ 幼児性愛についてもっとハラハラさせる場面を入れると、更に面白くなるのではないか。
 <野崎先生評>
クラス・リポート01.03.24_b0042328_100126.jpg・ 初めのうちは母親たちの活き活きした会話でテンポよく進んだが、種明かしの部分から急にトーンが変り先を急ぐ展開となっている。後半ももっとドラマチックにふくらませた方が良かった。これは出だしの部分の書込み不足が響いていると思う。例えばプロローグの部分を5ページ位になるように努力してみて欲しい。
・ 会話と地の文との結びつきを工夫して欲しい。又、場面展開のための行空けが多すぎる。行空けの替わりに地の文を書いてみる訓練をして欲しい。
・ 参考図書:『野沢尚のミステリードラマは眠らない』(NHK出版)

(2) 「数多(あまた)の中の罠」 (受講生 山屋敷浩 作品)
 ―著名な料理人の双子の娘のうち姉が失踪した。捜索を依頼された興信所の二人の所員が密室が絡んだ事件を追ううちに明らかになる双子の異常な心理とおぞましい結末―
・ 最後まで惹きつけられて読んだ。但し、赤の生肉が口に入れると溶けてしまう柔らかさというが本当なのか。(作者より、自分も食べたことがないので分からないが、他の人達も食べたことがない筈なので、適当に想像して書いた、とのコメント) 又、最後に二人の探偵のうち山屋敷が自殺をするが、そこまでの経緯で山屋敷がそれほどストイックなキャラクターには見えない。
・ 腕の傷による謎解きの仕掛けは分かり易すぎる。
・ 双子の心理を上手く利用した怖い話になっている。
・ トリックは今までにも良く使われているものだ。もっとひねった方がよい。
<野崎先生>
・ 文章がこなれていて読み易い。
・ 二人の探偵の物語かと思っていると途中からそうでなくなる。作者の意図がどこにあるかが気になる。
・ 双子の存在論、人肉食、という重いテーマにしては前半は軽快に展開する。最初からおぞましくした方が良かったのではないか。
・ 腕の傷のトリックはよくある話で読者はがっかりしてしまう。
(作者の言葉):一つの作品で、初めはハードボイルド、次に本格謎解き、最後にホラーと、
  書き分けてみようとした。
・ 参考図書:『料理人』ハリー・クレッシング(ハヤカワ文庫NV)

3. 次回(4月14日)
・ 課題図書:『連続殺人事件』ディクスン・カー(創元推理文庫)
・ 受講生作品:「パパの日」果桜史彼

尚、今回は今期の最後の日ということで、講座の終了後、中華料理屋で打ち上げをしました。

以 上
by eimu00 | 2004-10-23 09:52 | 00年度
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